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個人事業主は社会保険に加入できる?法人保険のメリットを解説

2024.10.30

個人事業主として働く人にとって、社会保険への加入は悩ましい問題です。社会保険とは、広義には「健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険」の5つを指し、国民健康保険なども該当します。ただし、狭義では、企業で働く会社員や労働者が加入する健康保険として使用されています。

本記事では、広義にそって個人事業主が社会保険に加入できるのか、個人事業主が入れる社会保険や、加入時に気をつけるポイントについて詳しく解説します。

個人事業主は社会保険に加入できる?

社会保険には、会社に勤めていない個人事業主や年金給付者などが加入する「国民健康保険」と、会社員が加入する「社会保険(健康保険)」の2種類が一般的に使用されています。そのため、個人事業主と会社員の社会保険は異なります。結論として、広義的な意味では、個人事業主は社会保険に加入できるといえます。ここからは、納税事務負担を軽減するために設けられた「簡易課税制度」についてや、個人事業主と会社員の社会保険の違いについて解説します。

簡易課税制度の適用条件

簡易課税制度とは、消費税の計算と納付を簡便にするための制度で、主に個人事業主や中小企業が利用することが多いです。この制度は、売上に対する消費税額から、仕入れや経費にかかった消費税を控除する通常の計算方法ではなく、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使用して計算する仕組みです。これにより、事務作業が簡略化され、消費税の納付が容易になります。簡易課税制度は、個人事業者は前々年、法人は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の中小事業者が対象です。たとえば、2024年度に簡易課税制度を利用する場合、2022年度の課税売上高が5,000万円を超えていないことが条件となります。また、この制度を利用するためには、事前に税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。この制度のメリットは、計算が簡単になることで事務負担が軽減される点です。また、支出にかかる消費税よりも、簡易課税の計算式で算出した控除額のほうが大きければ節税につながります。しかし、仕入れや経費が多い業種では、実際の経費に比べてみなし仕入率が低く、結果として納税額が増える可能性もあります。そのため、自社の業種や経費構造に合わせて、簡易課税制度を選択するかどうかを判断することが重要です。

個人事業主と会社員の社会保険の違い

個人事業主と会社員の社会保険には、加入方法や保険料の負担において顕著な違いがあります。まず、会社員は健康保険や厚生年金に強制加入となり、保険料は雇用主と折半します。このため、会社員は金銭的負担が軽減され、扶養家族として配偶者や子どもを加入させることが可能です。これに対し、個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入することが求められ、保険料は自己負担です。個人事業主の場合、扶養の概念がないため、配偶者や子どももそれぞれ独自に保険料を支払う必要があります。また、社会保険に関連する給付内容も異なります。会社員は、傷病手当や失業保険などの支援が受けられますが、個人事業主はこれらの保障がないため、リスクが高いとされています。具体的には、国民健康保険は労災保険に加入できず、病気やケガに対する保障が不十分なため、民間の保険を併用することが推奨されています。また、保険料の計算方法にも違いがあります。会社員の場合、給与に基づいて保険料が算出されるのに対し、個人事業主は売上や利益に応じて国民年金や国民健康保険の保険料を支払います。これにより、収入が不安定な場合は経済的負担が大きくなる可能性があります。このように、個人事業主と会社員では社会保険の加入形態やメリット・デメリットが異なるため、自身の状況に応じた選択が重要です。

個人事業主が加入できる4つの社会保険

個人事業主が加入できる社会保険は、事業運営や生活の安定において重要な役割を果たします。日本において、個人事業主は国民健康保険や国民年金を始めとするさまざまな保険に加入できる選択肢があります。以下より、個人事業主が利用できる4つの社会保険について詳しく解説します。

国民健康保険に加入する

国民健康保険は、個人事業主が基本的に加入することになる健康保険です。国民健康保険は、住民票のある市区町村が運営しており、全国民を対象にした制度です。この保険に加入することで、病気やケガに対する医療費の一部が保険でカバーされるため、万が一の際の経済的負担を軽減できます。国民健康保険の保険料は、前年の所得に基づいて計算されます。保険料は自己負担が基本ですが、世帯全体の収入に応じた減免制度もあるため、収入が少ない場合には軽減されることがあります。また、国民健康保険に加入することで、医療機関での診療を受ける際の自己負担が軽減されるため、安心して治療を受けられます。

健康保険組合などを任意継続する

個人事業主が以前に会社員として働いていた場合、退職後に健康保険を任意継続することが可能です。この任意継続制度を利用することで、元会社の健康保険の内容を引き継ぎつつ、継続的に医療サービスを受けられます。任意継続を希望する場合「任意継続被保険者資格取得申出書」を記入し、住居地を管轄する協会けんぽ支部へ、退職日の翌日から20日以内に申請が必要です。任意継続の最大のメリットは、会社が負担していた保険料の半分を自分で支払う必要があるものの、加入時の条件や給付内容をそのまま維持できる点です。ただし、任意継続は最長で2年間しか継続できないため、その後は国民健康保険など他の保険に切り替える必要があります。また、任意継続中に保険料の支払いが滞ると、自動的に脱退となるため、注意が必要です。

扶養家族として社会保険に加入する

個人事業主であっても、配偶者や家族が会社員で社会保険に加入している場合、扶養に入ることで社会保険に加入することが可能です。この場合、配偶者が扶養家族として登録されるため、保険料の負担が軽減されます。扶養に入るためには、一定の所得制限があり、個人事業主自身の所得が48万円以下、配偶者の年収が1,000万円以下である必要があります。扶養に入ることのメリットは、保険料が発生しないため、経済的な負担を軽減できる点です。また、会社員の社会保険に加入することで、病気やケガに対する保障も充実しており、個人事業主としてのリスクを軽減する手段となります。しかし、扶養から外れると、自身で国民健康保険に加入する必要があり、その際は保険料が自己負担となります。

各団体の国民健康保険組合へ加入する

個人事業主が加入できる別の選択肢として、各業界や団体が運営する国民健康保険組合があります。これらの組合は、特定の業種や職業に特化しているため、一般的な国民健康保険よりも、加入者に対して手厚い保障が用意されていることが特徴です。たとえば、文芸美術国民健康保険組合や東京美容国民健康保険組合など、特定の業種に対応した保険組合があるので、以下で詳しくみます。

文芸美術国民健康保険組合

文芸美術国民健康保険組合は、文芸や美術関連の職業に従事する人々を対象にした保険組合です。この組合に加入することで、医療費の負担軽減だけでなく、業界特有のサービスや支援を受けられます。また、加入者のニーズに応じた健康診断や講習会なども行っており、加入者にとって大きなメリットがあります。

東京美容国民健康保険組合

東京美容国民健康保険組合は、美容業界に従事する人々を対象にした保険組合です。この組合に加入することで、業界特有の医療サービスや手当を受けられます。美容業界はとくに健康に関するリスクが高いため、専用の保険制度が設けられていることは、業界内での安心感を提供する重要な要素となっています。

個人事業主が社会保険に加入する注意点

個人事業主は、社会保険への加入が可能ですが、加入するにあたって注意すべき点がいくつか生じます。以下では、個人事業主が社会保険に加入する際の注意点について解説します。

保険料はすべて自己負担になる

個人事業主が加入する社会保険、とくに国民健康保険や国民年金は、全額を自己負担しなければなりません。これは、会社員の場合、企業が保険料の一部を負担しているのとは大きな違いです。たとえば、会社員の厚生年金保険料は、従業員と会社で折半されるため、実質的な負担が軽減されますが、個人事業主は自分の収入から全額を支払う必要があります。このため、個人事業主は、保険料が収入に対してどのように影響を及ぼすかを十分に理解し、計画的に資金を管理する必要があります。とくに、収入が変動する場合、保険料の支払いが経済的な負担になることがあります。そのため、予算を立てて、安定した収入を確保するための工夫が求められます。また、収入が減少した場合でも、保険料の支払いが発生するため、事業運営のリスク管理を怠らないことが重要です。

保険料は経費として計上できない

個人事業主が負担する国民健康保険や国民年金の保険料は、経費として計上できないため、税金の計算時に収入から差し引けません。これは、法人における社会保険料が経費として扱われるのとは異なる点です。個人事業主にとって、この制度の適用外であることは、実質的な負担が大きくなる要因となります。そのため、保険料の支払いがじかに収入に影響を与えることを認識し、事業計画や税務戦略を練る必要があります。とくに、自己負担の保険料が経済的な負担となる場合には、ほかの節税対策や資金調達方法を検討することが求められるでしょう。

法人保険を活用する場合のメリットは?

法人保険は、企業がさまざまなリスクに備えるために利用できる重要なツールです。個人事業主と比べて、法人における保険の利用は多岐にわたり、節税効果や福利厚生の充実、従業員の退職金準備など、さまざまなメリットがあります。以下では、法人保険を活用する際の主なメリットについて詳しく解説します。

節税効果がある

法人保険の最も大きなメリットのひとつは、節税効果です。法人が保険料を支払う際、その保険料は経費として計上できます。これにより、法人税の課税対象となる所得を減少させることが可能になります。とくに、生命保険や医療保険、損害保険などは、保険料が法人の経費に含まれるため、税金の負担を軽減できるのです。このような節税効果は、長期的に見ると企業のキャッシュフローを改善し、再投資や新たな事業展開の資金を生み出す助けにもなります。また、適切な法人保険を選ぶことで、保険金が企業にとって有益な形で活用できるため、財務的な安定性を高める要素にもなります。

従業員の退職金を準備できる

法人保険を利用することで、従業員の退職金を事前に準備することが可能です。たとえば、退職金制度を法人保険で整備することにより、企業が退職金を支給する際の資金計画を立てやすくなります。とくに、終身保険や養老保険などを活用すれば、将来の退職金支給に必要な資金を計画的に積み立てられます。このように、法人保険を利用して退職金を準備することは、従業員に対する福利厚生の一環としても位置付けられ、社員の定着率やモチベーション向上にもつながります。企業にとっては、長期的な人材育成や企業文化の醸成にも寄与するため、非常に有意義な施策です。

福利厚生を手厚くできる

法人保険を活用することで、福利厚生を充実させることができます。従業員に対する福利厚生制度は、企業の魅力を高め、優秀な人材の確保や定着を促進します。具体的には、健康保険や団体生命保険、傷害保険などを法人保険として導入することで、従業員が安心して働ける環境を提供できるでしょう。福利厚生が充実している企業は、従業員の満足度が高まるため、結果的に生産性や業績の向上につながります。また、企業のブランドイメージの向上にも寄与し、よい人材を引き寄せる要因となります。法人保険を利用した福利厚生制度の強化は、企業の持続的な成長において重要な施策と言えるでしょう。こちらの記事では、個人事業主には登記が必要になるのか否かについて解説しています。照合登記をした方がいい理由、しない方がいい理由についても説明しているので、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ

個人事業主として働く場合、一般的には「国民健康保険」に加入します。会社員が加入する社会保険(健康保険)に入ることはできませんが、個人事業主でも選択肢は広がっており、会社員が加入している社会保険に近い保証を受ける方法がいくつか存在します。また、法人を設立した際は、法人保険を活用することでさまざまなメリットを得ることができます。オフィスでお困りの際は、レンタルオフィスをおすすめします。レンタルオフィスは、初期費用を抑えられるため、個人事業主にぴったりです。WORKPHILは、プライバシーを確保できるソロワークプランや、3〜5人で使えるオフィスプランなど、会社にあったプランを選ぶことが可能です。仕事の合間にリフレッシュできるこだわりのサービスや、周囲を気にせずWEB会議が利用できるブースなども充実しているので、オフィス選びでお悩みの方は、ぜひWORKPHILのレンタルオフィスをご利用ください。