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個人事業主は登記が必要?登記をするメリットや流れについて解説

2024.03.20

副業から個人事業主になる場合、法人のように登記の必要性が気になる場合もあるでしょう。開業する際にもれなく手続きしておくことは、事業者としてもよいことです。しかし、登記するとなると、法人を立ち上げなければならないのか、それとも個人事業主のままでできるのかなど、戸惑うことは多くあります。そこで、今回は個人事業主に登記が必要なのか、登記した場合のメリットや手続きの流れを解説していきます。登記について迷う方はぜひ、最後まで目を通してください。

登記とは

代表的な登記には法人登記や不動産登記などがありますが、これらの登記とは自身が経営する会社であることや自身の所有する不動産である、といった権利や義務を社会に向けて公示する意味があります。権利や義務を保護したうえで取引を行うための法制度でもあり、社会的信用の獲得や権利の主張などの際に役立ちます。簡単にいえば、法律上の身分証明のようなものです。副業から個人事業主になる場合は、開業届けを提出する際に屋号を提出できますが、実は屋号も必須ではなく、後から提出することも可能で、登記についても義務付けられていません。では、登記とは全くの無縁なのか?というとそういったわけではなく、個人事業主でも関連する法制度はあります。

個人事業主と登記

副業から個人事業主になるということは、単に副収入がほしいという感覚ではなく、事業者になるという自覚が必要です。事業者になるからには、手続きや法制度などももれなくきちんと済ませておきたい方もいるでしょう。ここでは個人事業主と登記の関係について詳しく解説します。

個人事業主に登記の義務はない

前章でも少しお伝えしたように、法人と違って個人事業主には登記の義務はありません。しかし、会社ではないために必須ではない、という表現の方が正しく、事業内容によっては登記したほうがよい場合もあります。

事業内容によっては商号登記が必要

個人事業主が利用できる制度として、商号登記が挙げられます。この商号登記とは、屋号を法務局に登記することを指し、事業内容に関する法的な証明として情報を一般公開することができます。似たような言葉に商標登録がありますが、これは商品やサービスに対しての特許であり、事業に関するものではありません。管轄も法務局ではなく特許庁になるため別ものであることは覚えておきましょう。また、法人に義務付けられている法人登記は、登記する法人の重要事項を登記するため、似ているようでも対象となるものが異なります。商号登記についてほかの言葉との違いを理解したうえで、次は商号登記をするメリットやデメリットをチェックしていきましょう。

商号登記のメリット

商号登記は個人事業主にとって義務ではないものの、行うことで個人事業主としてのメリットがあります。はじめに、メリットから解説します。

社会的な信頼性が高まる

商号登記には、事業内容をはじめ代表者名、屋号などの情報を公開する役割があります。そのため、個人であってもきちんとした事業を行っているという証明となり、社会的な信用を得られる機会が増えます。個人事業主といっても規模はさまざまで、年間報酬には開きがあります。そのなかで社会的信用を得ることは、今後の事業を左右する可能性もあるでしょう。また、屋号のままでは法的な拘束力はありませんが、登記することにより屋号に法的拘束力を持たせることができます。こうした意味からも社会的な信頼性が高まることがメリットといえます。

法人化した際の屋号の継続利用

副業からの開業だったとしても、後々は法人化を視野に入れている場合、屋号を商号登記することによりポジティブな影響を及ぼします。屋号を商号登記しておけば、法的拘束力が発生するために、法人化する際にも同じ屋号での登記が可能となります。もしも、商号登記せずに法人化のタイミングを迎えた場合、すでにほかの方がその屋号を法人登記していた場合は、別の屋号を使わなければならない可能性も出てきます。そういった意味では、先を見越して商号登記しておくのも選択肢の1つです。現在、まさに開業届を出したばかりで法人化まで考えられないとしても、一度、今後のビジョンを考えてみて、商号登記について検討してみることをおすすめします。

商号登記のデメリット

屋号の商号登記にはメリットがある一方で、デメリットもあります。実際に手続きをする前にデメリットも把握しておきましょう。

手続きが煩雑

商号登記の手続きには、さまざまな証明書や申請書、印鑑などが必要になります。もし、事業用の印鑑を持っていない場合は、屋号印や商号印の準備からすることになるでしょう。個人事業主の場合は個人印を使っても大きな問題はありませんが、今後の事業のことを考えるなら、屋号印や商号印があるほうが信用度によい影響を与えます。また、印鑑証明や実印も必要となるので、これらをすべて準備しなければなりません。これらの準備物に加え、事業内容を明確に表現すること、所定の書類を揃えて提出することは、開業届を出すときに比べると手続きが煩雑であることは否めないでしょう。

費用がかかる

商号登記には登録免許税という名目で3万円がかかります。具体的には合計で3万円分の印紙が必要なのですが、こうした費用をかけてでも屋号を登記するかどうかは迷うところもあるでしょう。また、オンラインで手続きする際は、書類に不備があった場合は、印紙を新たに購入しなければならない可能性があります。一度貼った印紙を剥がすのは困難なので、そういった意味でも慎重に行動しなければなりません。

商号登記の手順

商号登記を行うにはいくつかの手順に沿って行います。はじめに法務局に出向き対応する窓口で手続きする場合の手順を解説します。

印鑑登録・証明書を取得する

はじめに個人の実印を用意して、個人実印の印鑑証明を取得します。これらは手続きに不可欠なものなので、実印を持っていない場合は、事前に準備しておくことが必要です。屋号印も一緒に準備しておくと登録することができます。個人の実印登録と印鑑証明書の取得には、自治体にもよりますが数百円程度の手数料がかかります。こうした細かい手数料は見落としがちですが、費用面においては少し余裕を持っておくことをおすすめします。

商号登記申請書を作成する

つぎに商号登記申請書を作成します。この申請書は、基本的に自分で作成するようになります。地域により法務省がフォーマットを公開している場合とそうではない場合があるので、ほかの地域のものだったとしても、それを参考にして作成するとよいでしょう。そして、作成した書類には記入せずに法務局に持参し、職員にチェック・確認をしてもらいながら、書き方や内容、捺印するのが確実です。すべて記入し終わったらあらためて職員に確認してもらい、3万円分の印紙を貼りつけます。

窓口に提出する

すべての準備物と書類、印紙代を支払ったあとは窓口にこれらを提出します。手続きが完了するまでにはおおむね1週間程度ですが、具体的な日数が定められているわけではないので、気になる方はどれくらいかかるか確認しておくとよいでしょう。商号登記をしたあとは、印鑑のICカードをつくっておくことをおすすめします。カードを保有している人が法務局に登録した印鑑の保有者であることを証明するもので、今後、印鑑証明書が必要になったときに、これまでより早く書類を取得できるメリットがあります。今後の事業において、不動産を所有するときや法人の銀行口座を開設する際にも活用できるものなので、印鑑のICカードもまた先を見越してつくっておくとよいでしょう。

オンラインによる商号登記の手順

近年ではオンラインでも商号登記を申請することができるため、オンライン申請を行う場合は、法務省の「商業・法人登記のオンライン申請について」の指示に従い所定の準備をしてから着手するようになります。

商号登記申請書をデータで作成

はじめに、法務省が推奨する操作手引書【簡易版】のうち、自身の環境にあうものをダウンロードして各種設定を行います。商号登記の場合は商業・法人登記申請のソフトを使用し、申請書情報を作成します。提出する内容については記載例を参考にして、申請する本人または代理人の電子署名を付与しましょう。電子署名については事前に準備しておく必要があるので注意が必要です。

作成したデータに添付書面情報を添付

次に、申請に必要な添付書類を用意します。内容は事業内容や現状に合わせたものを作成することとなっており、主に個人実印の印鑑証明書などが挙げられます。オンラインで提出するため、pdf形式またはビットマップイメージファイル、XML電子公文書ファイル形式にして保存します。さらにこれらのファイルには電子署名の付与も忘れずに行ってください。添付ファイルの合計容量は1つの申請につき15MBまで、添付ファイル一覧画面からファイルを選び添付します。

申請書を登記・供託オンライン申請システムにデータ送信

申請データの準備が整ったら申請システムに送信します。このとき、委任状を提出する場合は、別途手続きが必要なので注意が必要です。申請データが専用システムに到達すると、その旨を知らせる申請番号・到達日時などの情報を受け取ります。その後、データが申請先登記所で受付されると、さらにその受付番号と受付日時のお知らせも届きます。これらのお知らせが届かない・確認できない場合は、データ送信時に問題があるか、正式に送信できていない可能性があるので、再度確認してみることをおすすめします。

登録免許税を納付

オンラインで申請する際の登記免許税は、電子納付または登記所の窓口で納付・送付することができます。電子納付する際は、歳入金電子納付システムから納付します。ただ、申請書情報が専用システムに到達した翌日から3日間が納付期限となるため、注意が必要です。たとえば、金曜日の業務終了後に専用システムに情報が到達した場合は、翌週の月曜から水曜までが納付期限となります。窓口で納付・送付する場合は、お知らせに記載されている期限までに登記所に提出するのが原則です。

商号登記の注意点

個人事業主が商号登記することは、将来的に法人化することを考えてもやっておいて損はありません。しかし、いくつか気をつけておきたいこともあります。ここでは商号登記する際の注意点について解説します。

同一の住所に同一の商号がないかチェックする

会社法では、同一の住所に同じ商号がある場合は登記できないと定めています。これは「同一の住所」というのがポイントで、同じ都道府県や市内であれば問題はありません。ただし、同一住所の条件をクリアしているとしても、悪意や不正の目的でよく似た商号をつかうことはできないと規定していることから、この点には注意が必要です。悪意がないとしても先に登記した企業が損害を被ることがあれば、損害賠償などを求められる可能性があるので、オリジナルの商号にするのがよいでしょう。

使用できない文字がある

商号には使用できる文字とできない文字があります。使用可能なものでは、漢字・ひらがな・カタカタ・ローマ字・アラビア数字が挙げられ、できないものにはアンパサンド(&)やアポストロフィ・コンマ・ハイフン・ピリオド・中間点・ギリシャ文字・ハングル文字などがあります。ただし、省略を意味する場合のピリオドについては末尾への使用が認められています。また、特定の業種を示す文字もその業種を営んでいない場合は、使用することができません。たとえば、銀行や信用金庫、保険会社などが挙げられます。これらの業種を営む場合は使用が義務付けられており、そうでない場合は使用禁止となっています。

使用しなければならない文字もある

とくに株式会社を設立する際は、商号のなかに「株式会社」を使用しなければなりません。商号の前後どちらにつけるかまでは問われませんが、株式会社なのに合同会社とするようなことは認められていないので、この点には注意が必要です。なお、株式会社の変わりに英文表記で「Co.,Ltd.」などがありますが、これらは登記できません。ただし、会社概要や定款などに社名の英語表記として掲載することは可能です。

他社の商標は避ける

企業のなかには社名を商標登録しているところがありますが、同一住所でなくとも勘違いされるような近い名称は避けることをおすすめします。商標登録は特許をとっているために、一文字違いの名称など勘違いされるような場合は、使用差止めなどの法的な措置を取られる恐れがあるからです。個人事業主は働く場所を選ばないケースもあるので、そんな時にコワーキングスペースを事業の拠点として使う選択が考えられます。こちらでは、コワーキングスペースを利用するメリット・デメリットや費用相場について解説しますので、合わせてご覧ください。

まとめ

個人事業主の屋号は、商号登記することで信用度のアップや、法的拘束力が発生することをお伝えしました。副業から開業したばかりだとしても、自身の屋号を法人化しても使いたい場合は、早めに商号登記しておくことをおすすめします。働く場所を選ばないスタンスの個人事業主の場合、自宅の一部を事務所にするケースがあるかと思いますが、場合によってはオフィスが必要になることもあるでしょう。新大阪のシェアオフィス「WORKPHIL」は、24時間利用可能、必要なときに必要な分だけオフィスとして利用することができます。ラウンジやミーティングルームも完備しているので、事業に合わせた使い方ができるのが魅力です。また、充実の防犯対策に加え低コストと、開業したてでも使いやすいです。シェアオフィスのご利用の際は、ぜひ「WORKPHIL」にご相談ください。