コラム
コラム
コラム

コラム

資本金とは何か?起業時に必要な金額や設定方法までわかりやすく解説

2025.02.19

資本金の金額は、会社設立後の運営に大きな影響を与えます。資本金が増えると、運営資金が豊富になり、会社の信用度も向上します。返済不要な元手が増えるため、経営が安定しやすくなるでしょう。しかし、資本金の額によって税負担が変わるため、慎重に決める必要があります。この記事では、資本金の特徴や目安となる金額について解説しています。また、資本金の決め方や税金に与える影響も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

資本金とは?

資本金は、事業活動のために使用できる資金です。上場企業・非上場企業を問わず、多くの会社がホームページの会社概要欄に掲載しています。ここでは、資本金の役割や特徴について解説します。

資本金の意味

資本金とは、会社の設立や増資の際に出資者から払い込まれた資金であり、事業運営を円滑に進めるために株主が会社へ出資した金額のことです。資本金は、借入金とは異なり、返済義務がありません。つまり、会社は資本金を返済する必要がないため、事業活動の基盤として活用できます。資金は、基本的に株主たちから集められます。株主は出資を行うことで、会社の一部を所有する権利を得ます。しかし、会社設立時には、外部の投資家や株主がいない場合も多く、創業者が自分で貯めたお金を資本金にあてるのが一般的です。

資本金の役割

資本金は、会社設立時において、事業の基盤となる資金として重要な役割を果たします。会社を立ち上げる際には、設備資金や運営費用が必要となるため、これらをまかなうための初期資金が不可欠です。しかし、取引先に商品の販売やサービスの提供を行っても、代金を回収するまでには時間がかかります。その間、事業を継続するためには、運転資金が必要です。つまり、資本金は運転資金に使われるお金であり、事業をスムーズに経営するためには欠かせないものです。資本金が多い会社は、財政的に安定していると考えられます。予期せぬトラブルにも対応しやすく、資金不足による倒産リスクが低いと見なされることが多いです。取引先や金融機関から「この会社は安定して事業を運営できる」と評価され、信頼を得られます。

企業における資本金の重要性

資本金は、事業を始めるための原資であり、会社の財務基盤を支える資金です。以下で、資本金が企業に与える影響について紹介します。

取引をするときの与信調査に使われる

資本金は、取引先からの与信調査の対象となります。とくに、初めて取引する相手に対しては、信用力や支払い能力を確認するために与信調査が行われることが一般的です。もし、代金の未払いや支払いの遅延などの事態が発生すると、取引先に大きな損失が生じる可能性があります。初めて取引をする企業は信用度が低いことから、こうしたリスク回避のために、資本金を含む会社の基本情報が調べられます。この調査により、取引先は自社が約束どおり代金を支払う能力や意志があるかどうかを確認します。

銀行からの借入限度額が決まる

資本金は、銀行からの借入限度額に影響を与えます。資本金が多い企業は、一般的に自己資本比率が高いため、財務状況が安定していると見なされるからです。銀行側は、借入の上限額の引き上げを行う、または有利な条件で融資を提供してくれる可能性があるでしょう。ただし、創業や増資時に資本金として使用する目的で融資を受けることはできません。資本金はあくまでも「出資金」であり、融資とは異なるため、その点を理解しておくことが大切です。一方で、資本金が少ない企業は、自己資本比率が低いため、銀行側が融資するリスクが高いと判断する場合があります。結果として、融資額が抑えられる、または融資条件が不利になる可能性があります。

資本金は会社の規模を表す指標になる

資本金は、会社の規模を表すひとつの指標です。資本金が多い企業は、より多くの資金を活用して事業を進められるため、会社の規模や成長の可能性を判断する基準となります。そのため、取引先や金融機関は、企業の資本金の額から、会社の規模感や信頼性を判断します。資本金は単なる金額ではなく、会社のビジョンや成長意欲の象徴ともいえるでしょう。

起業時に必要な資本金の目安と決め方

起業時に、どのくらいの資本金を用意すればよいのか迷う方も多いでしょう。適切に設定しなければ、事業運営や成長に大きな影響を及ぼしかねません。以下で、起業時に必要な資本金の目安と決め方について解説します。

初期投資額と運転資金を見込んで設定する

事業を始めるにあたって、どのくらいの資金が必要かをあらかじめ把握しておくことが大切です。設備投資や運転資金がどの程度かかるのかを調べて、資本金を決定しましょう。創業したばかりの会社は、まだ事業の基盤が整っていないため、一般的には運転資金の3〜6か月分を資本金として見積もることが多いです。また、売掛金の回収に時間がかかる業種の場合、運転資金を少し多めに確保しておくことが大切です。

取引先からの見え方を考慮する

資本金は、取引先からの信用にもつながるため、適切な額を設定しましょう。もし資本金が不足している場合、経営者が自分の資金を会社に入れる必要があります。たとえば、個人事業主との取引を避けている企業の場合、資本金額を基準に取引先を選ぶことがあります。このような状況は、企業間取引(BtoB)のビジネスに当てはまります。BtoBビジネスでは、取引先が企業であり、資本金が信用に直結することが多いため、資本金の額が重視される傾向があります。一方、消費者向けのビジネス(BtoC)のように、取引先が限られていて個人との取引が多い場合、資本金が少なくても問題が発生しにくいことが考えられます。

消費税の納税義務を考慮する

資本金は、消費税の納税義務を考慮して設定しましょう。起業時の資本金が1,000万円を基準に消費税の納税義務が発生します。また、資本金の額に応じて、登録免許税、法人税、法人住民税などの税負担が増加することにも注意が必要です。

許認可の条件を満たす

許認可が必要な業種では、資本金額が設立要件として定められている場合があります。たとえば、有料職業紹介事業は500万円、一般労働者派遣事業は2,000万円の資本金が求められます。起業前に、自社が希望する業種の資本金要件を必ず調べておきましょう。

他社の資本金設定額を参考にする

新会社法により最低資本金制度は廃止され、資本金額に制限はなくなりました。しかし現在でも、多くの企業では、資本金額を取引の基準のひとつとして見なす商慣習が残っています。取引先によっては、資本金の額を信用力の判断材料として重視する場合もあります。そのため、他社の資本金設定額を参考にするのもひとつの方法です。

資本金が税金に与える影響

資本金の額は法人が納める税金に大きく影響します。とくに、創業当初の税金は資金繰りを圧迫するため、税負担を考慮して資本金を設定しましょう。資本金に関係するのは、消費税、法人税、地方税、登録免許税の4つです。

消費税

創業直後の会社が消費税を納める義務があるかどうかは、資本金の額によって決まります。

資本金が1,000万円以下の場合、会社は免税事業者として扱われるため、設立から2年間は消費税の納税義務がありません。一方、資本金が1,000万円を超えると、設立初年度から消費税の納税義務が生じます。会社が商品やサービスの提供時に受け取った消費税を、国に納めなければなりません。なお、設立3年目以降は通常どおり、基準期間の課税売上高にもとづいて消費税の納税義務が判断されます。

法人税

法人税は、事業年度における会社の所得に課される国税です。赤字の場合は課税されません。法人税の計算式は以下のとおりです。法人税=(課税所得)×税率 – 税額控除額控除可能な税金としては、所得税額控除や外国税額控除などがあります。税率は、次のように資本金の額や所得に応じて変わります。

  • 資本金1億円以下の普通法人の場合

所得のうち年800万円以下の部分は、適用除外事業者を除き、15%の税率が適用されます。

年800万円を超える部分には、23.2%の税率が適用されます。

  • 資本金1億円超の場合

利益全体に対して一律23.2%の税率が適用されます。法人の種類によって税率が異なるため、詳しくは国税庁ホームページの「タックスアンサー」を参考にしてください。出典:「No.5759 法人税の税率」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm

地方税

資本金が多いと、地方税である法人住民税に影響が出るため注意が必要です。法人住民税の均等割は、赤字でも納税義務が発生します。税額は資本金の額に応じて変わり、従業員数50人以下の会社は、以下のようになります。

  • 資本金1,000万円以下の場合は年額5万円
  • 資本金1,000万円超、1億円以下の場合は年額13万円

資本金が1,000万円を超えると、年額5万円から13万円へと増額します。増資する際は、その必要性や妥当性を判断しましょう。出典:「法人住民税」(総務省)(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_08.html

登録免許税

登録免許税は、資本金に応じて課される国税です。会社を設立する際の登記申請時に支払う必要があります。税額は資本金の0.7%で計算されますが、株式会社か合同会社によって、最低額が設定されています。株式会社は最低15万円で、15万に満たないときは申請1件につき15万円が課税されます。一方、合同会社の最低額は6万円です。6万円に満たないときは、申請1件につき6万円が課税されます。また、増資する際にも、増資額の0.7%が課税されるため注意しましょう。3万円に満たないときは、申請1件につき3万円支払う必要があります。出典:「No.7191 登録免許税の税額表」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

資本金を増資するメリットとデメリット

増資により、資金調達や信用力の向上が可能となりますが、一方で税負担が増える、既存株主の持ち株比率や議決権比率が低下するといったデメリットもあります。そのため、増資の可否や規模については慎重に検討する必要があります。

資本金を増資するメリット

資本金を増やすと、多くの場合、株式を新たに発行することになります。増資すると、より多くの資金を集めやすくなるのがメリットです。また、株主からの出資金は返済不要なため、新たな借入をせずに事業資金として活用できます。資金を使って、新商品の開発やサービスの拡充、設備投資など、会社の成長につながる取り組みを進められます。加えて、資本金が増えることで、ほかの企業や金融機関からの信用度が高まり、取引や融資がスムーズに進むのが利点です。

資本金を増資するデメリット

資本金の額が増えると、税負担が増えるリスクが生じます。起業直後は会社の収益は安定していない場合が多いため、税負担により黒字倒産するリスクがあります。増資をする前に、どのくらい税金が増えるのか確認しておきましょう。さらに、株式を発行して資金を調達するため、既存株主の議決権の割合が減る可能性があります。株主の影響力が小さくなり、会社の経営や意思決定に影響を及ぼす可能性があることに注意が必要です。

資本金を減資するメリットとデメリット

資本金を減資すると、税負担の軽減や損失の補填、法人税の還付が受けられるのがメリットです。一方で、会社の信用が低下するリスクがある、手続きに時間や費用がかかるなどのデメリットもあります。減資は、メリット・デメリットを踏まえて実行するか検討しましょう。

資本金を減資するメリット

資本金を減資することで、税金の負担が軽くなる場合があります。資本金の額によって、法人税や法人住民税などの税負担を減らせます。また、もし会社が過去に負債(繰越欠損金)を抱えていた場合、減資を利用して負債を帳簿上からなくすことが可能です。たとえば、資本金が5億円で負債が3億円の会社が、資本金を2億円に減らすと、帳簿上の負債は0になります。負債がなくなることで、取引先や銀行からの信頼を得やすくなる可能性があります。また、減資を活用することで、法人税の還付を受けられる場合があります。たとえば、今期が赤字で前期に法人税を支払っていた場合、この赤字を前期に繰り戻して法人税を一部または全額還付してもらうことが可能です。ただし、法人税の還付を受けるには、資本金が1億円以下であることや、前期と赤字となった事業年度の両方で青色申告を行っていることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。出典:「No.5763 欠損金の繰戻しによる還付」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htm

資本金を減資するデメリット

資本金を減資するデメリットは、会社の信用が低下する可能性があることです。資本金が減ると、会社が借金を抱えている、または信用がないと見なされる場合があります。とくに取引先や銀行など、会社の経営状態を重視する相手には不安を与えるでしょう。結果として、融資が受けづらくなる、または取引が難しくなるリスクは否定できません。また、減資を実施するには時間と費用がかかります。減資には株主総会での承認が必要です。登記手続きも行わなければならないため、登記費用も発生します。そして、減資しても、会社の収益を改善できるわけではありません。主に帳簿上の数字を調整するための手段であり、会社の利益を生み出せるわけではない点も押さえておきましょう。

資本金の使い道とは?基本的な取り扱い方

資本金を設定しても、使うタイミングや使い方が分からないという方もいるでしょう。以下で、資本金の具体的な取り扱い方や手続きの流れについて分かりやすく解説します。

資本金を使用するタイミング

資本金は、事業のためであれば自由に使えます。登記で定めた金額を使い切っても問題ありません。使い切った場合でも、借金ではないため、再度補充する必要はありません。ただし、事業計画を立てて、計画的に使うことが大切です。無駄に資金を使ってしまうと、金融機関からお金の管理ができていない会社と見なされます。融資面で不利になるため、計画を立てて活用しましょう。

資本金の主な使い道

資本金はあらかじめ使い道を考えておくと、金額も決めやすくなります。事業を進めるためにどのくらいの資金が必要かを考えましょう。たとえば、店舗や事務所を開設する際には、家賃や仲介手数料、内外装工事費などが必要です。パソコンやプリンター、机、イスなどの設備や備品にかかる費用も考慮しましょう。固定費だけでなく、仕入れ代金や運送費、交通費といった変動費も含めての計算が大切です。

会社設立時の資本金の払込方法

会社を設立する際、資本金の払い込みは登記申請までに完了している必要があります。ただし、会社名義の銀行口座は、登記手続きが完了した後でないと開設できません。そのため、登記申請時点では資本金を入れるために、経営者の個人口座で一時的に預かる形を取ります。具体的には、以下の流れで手続きを進めます。

  1. 経営者が現在使用している個人口座を利用するか、新たに開設した個人口座を使用
  2. 資本金を個人口座に振り込み、通帳をコピーする
  3. 資本金が払い込まれたことを証明する書類を作成
  4. 登記が完了した後に会社名義の銀行口座を開設
  5. 個人口座から会社名義の法人口座へ資本金を振り替える

資本金を使いたいときの出金方法

資本金は、事業運営のための運転資金として使用される資金です。事業活動に関連する支払いであれば、特別な手続きは必要ありません。資金が必要になれば、いつでも法人口座から引き出せます。ただし、請求書や領収書、契約書など取引に関する書類は適切に保管し、支出は正確に記録する必要があります。また、正当な事業目的にもとづく支出でなければなりません。資本金はあくまでも会社の資産であるため、個人の目的で使用することは、会社資産の私的流用とみなされます。こちらの記事では、会社設立の流れについて解説しています。設立前後のやることリストについても取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

資本金の増額手続き

資本金を増額する際、まずは増資方法を決めましょう。以下の3種類があります。

  • 第三者割当増資:外部の投資家や取引先に新株を発行する方法
  • 株主割当増資:現在の株主に新株を発行し、資金を集める方法
  • 公募増資:株式を広く一般の投資家に公開資金を調達する方法

次に、株主総会で決議を行います。しかし、第三者割当増資では、株主総会の特別決議は不要で、取締役会の決議だけで株式発行を決定できます。決議後は、株主へ募集要項の通知や公告を行う必要があります。増資分の資金の払い込みが完了したあと、法務局で資本金の変更登記を行います。登記申請は、増資完了の日から2週間以内に行う必要があります。

まとめ

増資は、事業拡大や財務強化を目的に行われ、外部投資家からの信頼を得るための手段としても用いられます。一方、減資は税負担の軽減や財務効率化のために行われます。リスクやコストを十分に理解した上で、慎重に資本金の増減を判断しましょう。増資や減資を行う際は、その方法に応じて株主総会や取締役会の決議が必要です。資本金の変更目的や計画を明確にしておくと、投資家や株主からの理解と納得を得やすくなります。低コストでビジネスを始めたい方や、駅近のオフィスを探している方は、WORKPHILのレンタルオフィスをご活用ください。WORKPHILは、新大阪駅から徒歩2分という好立地にある24時間365日利用可能なレンタルオフィスです。フリードリンク、ミーティングルーム、フリーWi-Fi、法人登記可、宅配BOX、郵便ポストなど、多彩なサービスを提供しています。レンタルオフィスをお探しの方は、ぜひ一度お問い合わせください。