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人時生産性を上げるには?計算方法や平均・向上させる方法を解説

2024.05.29

人時生産性を上げるには、業務の効率化やITツールの導入などを実行し、業務改革を行わなければなりません。また、人時生産性を上げるまえに、粗利益高や勤務時間の正確な記録、各業界の平均値を把握することも必要です。今回は、人時生産性を上げる方法や計算方法、各業界の平均値について詳しく解説します。人時生産性を上げる方法についてお悩みの方は、最後までぜひご覧ください。

人時生産性とは

人時生産性とは、従業員ひとりが1時間あたりに生み出せる利益を表す指標のことです。算出した数値が高いほど、短時間で利益を生み出していることになります。人時生産性は、自社の経営に関わる分析や意思決定の判断材料として用いられます。より高度な分析をするためには、売上高や売上原価の算出・勤怠管理の正確性を高めることが必要です。ほかにも、似た言葉として「労働生産性」や「人時売上高」といった言葉が用いられる場合もあります。ここからは、人時生産性と労働生産性・人時売上高との各違いについて解説します。

労働生産性との違い

労働生産性とは、投入した労働量に対してどれほどの成果を上げられたかを表す指標です。人時生産性は利益、労働生産性は成果にフォーカスしている指標であるということが明確な違いです。労働生産性は「産出量÷投入した労働量」で算出できます。たとえば、従業員5人が8時間で500個の商品を生産したとします。この場合の労働生産性は、500個÷(5人×8時間)=12.5個/時間です。労働生産性は、現場の生産効率を確認する際に用いられます。労働生産性を算出して現状や生産性を下げている原因を把握し、計画を立てて改善を繰り返すことが対策になります。

人時売上高との違い

人時売上高とは、従業員ひとりが1時間あたりにどれほど売り上げたかを表す指標です。人時生産性は利益、人時売上高は売上にフォーカスしているのが大きな違いです。また、人時売上高は「売上高÷総労働時間」で算出します。そのため、人時生産性とは違い、人時売上高は材料費や人件費などの経費も含めた数値となります。実際には、シフトを組む際に用いられるのが代表的な例です。

人時生産性の向上が必要な理由

人時生産性の向上が必要となっている代表的な理由は、生産年齢人口の減少です。内閣府によると、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年の8,716万人をピークに年々減少しています。2050年には5,275万人(1995年から約40%減)にまで減少すると推測されています。生産年齢人口が減少すると、企業ではやがて人手不足が発生するでしょう。そうなると1人あたりの業務量が多くなるため、長時間労働や労働意欲の低下などが起こり、いずれ離職者の増加へとつながります。人手不足が深刻になると、最悪の場合は企業自体が倒産することも考えられます。このような事態を防ぐためには、少ない人員でも継続的に事業が成り立つ仕組みづくりが重要です。そのため、近年では人時生産性の向上が意識されています。

人時生産性の低下にともなうロス

人時生産性の低下が生じると、さまざまなロスを引き起こします。ここからは、人時生産性の低下にともなうロスを5種類紹介します。現状と照らし合わせ、すでに発生しているロスがあれば、早急に改善していきましょう。

生産ロス

生産ロスとは、不要となる時間が作業時間に含まれていることです。不要かどうかを判断するには、現時点での各作業における所要時間を算出して可視化する必要があります。各所要時間を可視化できたあとは、よりその時間を細分化して本当に必要な時間であるかを判断します。作業全体のなかには、必要以上に時間がかかっている作業があるかもしれません。たとえば、使用する機械の不具合がよく起こっていたり、前の作業を完了させてから次の作業を始める間の時間が異様に長かったりするなどの問題が起こっていないかを確認しましょう。生産ロスは意識的に確認しないと発見できない問題もあるため、定期的に見直しましょう。

管理ロス

管理ロスとは、管理上で生じる待機時間のことです。たとえば、機械のメンテナンスにより再開できるまで待機している時間や材料を調達して届くまで待機している時間のことを指します。管理部門がある場合は、その管理部門で立てたスケジュールに問題があり、現場はスケジュールが修正されるまで待たなければいけないという場合も管理ロスに該当します。管理ロスは外的要因で生じることが多いため、自社ではなかなか解決が難しいです。管理ロスが生じた場合は、待機時間にほかの作業を行って、時間を有効活用することが管理ロスの拡大を防ぐ解決策となります。

動作ロス

動作ロスとは、配置された作業員による作業効率や導線の悪さで生じるロスのことを指します。具体的には、使う資材が置いてある場所が作業場から遠いために生じる時間的ロスが代表的です。動作ロスがあると、本来達成できる成果も達成できないという問題が生じてきます。配置した作業員が適切か、資材をより取りやすい位置に置けないかなど、現状をもとに改善策を見つけていきましょう。

自動化しないことによるロス

自動化しないことによるロスとは、自動化可能なところを手動で対応していることで生じる時間や労力的なロスのことです。たとえば、飲食店のスタッフが注文を受けるよりも、席に置いているタブレットで注文できるようにする方が人件費や業務量の削減につながります。自動化することで、初期にかかるコストは設備投資という意味合いで高額になるでしょう。しかし、長期的に考えると、効率面やコスト面などへのメリットが大きくなります。

編成ロス

編成ロスとは、工程の編成ミスにより生じる時間的ロスのことを指します。具体的にいうと、前の工程に予想以上の時間がかかってしまい、あとの工程で控えている作業員の待ち時間が多く発生してしまうことです。各工程の所要時間を予想する精度を上げ、無駄な時間が発生することなく、スムーズに作業が進むような工程づくりが重要です。

人時生産性の計算方法

人時生産性の計算式は「粗利益高÷総労働時間」です。粗利益高は売上高から売上原価を差し引いた金額、総労働時間は労働時間と時間外労働時間を合わせた時間を指します。たとえば、粗利益高が50万円・総労働時間が100時間である場合の人時生産性は5,000円となります。より人時生産性の向上を図るためには、粗利益高を増やすか、総労働時間を減らすことが必要です。また、人時生産性自体の算出精度を上げるには、粗利益高と総労働時間の正確性を高めなければいけません。とくに、総労働時間は企業によって勤怠管理にバラつきがあるため、正確に算出できない場合があります。普段から勤怠管理を正確に行うことが、人時生産性の正確性も向上させることになります。

人時生産性の平均

ここからは、人時生産性の平均値について、4つの業界を取り上げて解説しています。人時生産性を向上させるには、やはり業界によってアプローチの方法が異なります。しかし、どの業界でも、現状をもとに実現可能なところから改善することが重要なポイントです。4つの業界について目をとおしたあと、当事者意識を持って、改善方法を考えてみてください。

飲食店

2021年6月付で中小企業庁が発表した「中小小売業・サービス業の生産性分析」(以下では「同分析」と表示)によると、飲食店の人時生産性の平均は1,902円でした。飲食店で人時生産性を向上させるためには、売り上げの向上・原価を抑える工夫などが改善策となります。改善策の具体例としては、テイクアウト事業を始めてより売り上げを伸ばす、急速冷凍機を導入して仕入れコストを抑えるなどが挙げられます。もちろん、対応できるスタッフ数や人材を確保したうえでの改善になるため、現状と照らし合わせながら実行していきましょう。

小売業

同分析では、小売業の人時生産性の平均は2,444円でした。小売業では売上から原価を差し引いた額が粗利益となるため、1時間あたりにより多くの商品を売ることで人時生産性の向上につながります。より多くの商品を売るためには、業務の効率化を促進させることが効果的です。たとえば、キャッシュレス決済の導入やマニュアルの整備を行うことで、業務全体が効率よく回ります。とくに、マニュアルは新人教育の際に活躍し、少しでも早く新人が1人前として働けるようになるでしょう。

製造業

同分析によると、製造業の人時生産性の平均は2,837円でした。製造業は、短時間でより多くの生産を実現することで、人時生産性が上がります。短い時間でより多くの製品を生産するために、定期的な機械のメンテナンスや適切な資材・人材の配置などを怠らずに実行することが重要です。しかし、コスト面を考えると、必ずしも安ければよいというわけではありません。機械の耐久性や資材の質などは、コスト面を抑えすぎるとかえって製品や会社の価値を下げることにつながります。「なぜその製品はその金額で売られているのか」という説明で製品に付加価値を付け、顧客が納得できるまでプレゼンすることが人時生産性を向上させるひとつのきっかけとなります。

宿泊業

同分析によると、宿泊業の人時生産性の平均は2,805円でした。宿泊業は、客室の稼働率を上げることで人時生産性の向上につながります。客室の稼働率を上げるためには、SNSでの宣伝や予約できるサイトを増やす、自社サイトのSEO対策を強化するなどのネットを使った方法が効果的です。「この宿に泊まってみたい」と多くの人が思えるきっかけを増やしていきましょう。もちろん、アメニティの充実度や接客力の向上など、既存のものを強化していくことも大切です。

人時生産性を向上させる方法

人時生産性の向上が必要だと判断したあとは、以下の5つの方法を実践してみましょう。ただし、なかには初期費用が発生する方法もあるため、なるべく費用をかけずにできる方法から始めてみましょう。

適切に人員を配置する

人員配置を行う際は、適材適所という言葉にしたがって、従業員の向き不向きを考慮することが必要です。適切な人員配置ができていなければ、業務全体が非効率になります。たとえば、英語が必要な仕事であれば、英語が話せない従業員よりも、英語が話せる従業員を配置することで仕事が速く回ります。しかし、現時点では不向きでも、将来的なキャリアを考えると取り組んだ方がよい場合もあるため、各従業員の将来性まで考えて配置しなければいけません。

現状を把握して人件費を削減する

人件費の削減はコストカットへ大きな効果をもたらしますが、削減するまえに必ず現状を把握しましょう。現状把握をせずに人件費を削減すると、1人あたりの業務量の増加や長時間労働の常態化が進み、離職率が高まるおそれがあります。まずは、現時点での人員配置を確認し、業務に対して人員が異常に多く配置されていないかを確認しましょう。その際に、人時生産性の算出が役に立ちます。人時生産性が極めて高い優秀な人がいる場合は、追加の人員配置が必要ない場合があります。

業務を効率化する

人時生産性の向上には、業務の効率化が欠かせません。まずは業務全体の現状を把握し、効率化を妨げている要素を確認しましょう。現状を把握する際は、各作業の所要時間や各従業員の業務量が妥当であるかを見極める必要があります。業務を効率化できれば、労働時間が短縮され、従業員が快適に働ける労働環境へとつながります。

ITツールを導入する

自動化できる業務には、ITツールを導入しましょう。ITツールを導入することで、従業員の負担が減り、ヒューマンエラーも減少します。ただし、初期費用が発生する点には注意が必要です。導入後の費用対効果をある程度計算したうえで、導入するかを検討しましょう。

従業員のモチベーションを向上させる

人時生産性が向上するまでは、今まで以上に従業員の協力が必要です。成果が出るまでは多くの時間を費やし、従来の業務スタイルを一部変えることにもなります。そのため、従業員のモチベーションを向上させる環境づくりが重要です。実際には、自社の方向性を伝える、人事評価制度を強化する、などがモチベーション向上への具体策となるはずです。「従業員なくして人時生産性は向上できない」ということを常に意識し、協力してくれる従業員に感謝しましょう。そして、日々の業務へ一生懸命取り組んでくれるような環境づくりを行いましょう。人時生産性を高めるには、固定費の削減も重要です。オフィスサービスは、コスト削減できるサービスとして注目が集まっています。こちらの記事では、オフィスサービスのひとつのサービスオフィスについて解説しています。向いている企業やほかのオフィスサービスも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ

今回は、人時生産性を上げるための方法について解説しました。人時生産性とは利益を表す指標であり、業務の効率化やITツールの導入などによって向上できます。また、人時生産性を高めるにはコスト面の工夫も必要です。とくに、固定費の削減が実現できると、人時生産性の向上により期待が持てます。大阪市内で固定費削減にお悩みの方は、レンタルオフィスの導入をぜひご検討ください。シェアレンタルオフィスのWORKPHILは、新大阪駅から徒歩2分という好立地であり、ミーティングルームやTELブースも設置しております。内覧予約は随時承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。